当事務所の解決事例
2023.06.15
【No.205】完治した20代会社員の男性について、賠償金30万円の増額に成功した事例
相談者:男性Mさん
職業:会社員
傷害の内容:うつ病、心的外傷後ストレス障害
項目名 | 依頼前 | 依頼後 |
---|---|---|
治療費 | 190,000円 | 200,000円 |
通院費 | 2,000円 | 2,000円 |
休業損害 | 0円 | 940,000円 |
入通院慰謝料 | 120,000円 | 290,000円 |
素因減額(-10%) | 0円 | -143,200円 |
調整金 | 0円 | 12,264円 |
合計 | 312,000円 | 1,301,064円 |
背景
20代会社員の男性Mさんは、普通乗用自動車を運転し、神社の前の道路の路肩に自車を路上駐車させていたところ、自車を駐車させてから20~30秒ほど経過したところで、自車の後ろから走行してきた普通乗用自動車に衝突される事故に遭いました。
Mさんは、事故の3日後に受診した総合病院の整形外科で、外傷性頚部症候群等の診断を受けた他、事故の6日後に受診した総合病院の心療内科では、事故によるうつ病、心的外傷後ストレス障害の診断を受けました。Mさんは、整形外科への通院は1回で終了しましたが、うつ病、心的外傷後ストレス障害の治療のために総合病院の診療内科に約半年間、13回に渡り通院し、治療終了しました。
なお、Mさんは、事故の3カ月程前から、身体症状症で同じ総合病院の心療内科に通院し、会社も休職していました。
弁護士の関わり
治療終了し、相手方損保から示談提案を受けた段階でご依頼いただきました。
弁護士介入前、相手方損保は、心療内科の治療費は既に病院に支払っており、かつ、通院の慰謝料として約12万円を提示してきていました。
弁護士介入後の交渉段階では、相手方損保は、当初提示していた慰謝料12万円に休業損害8万5000円を加え、立替医療費等を含めて総額約22万円を支払う旨、提案してきました。
主たる傷害が心理的なものであったことから、上の手続に移行するかどうか慎重に検討しましたが、本人の強い意向もあり、まずは、交通事故紛争処理センターへの申立を行いました。
ただ、紛争処理センターへの申立を行ったところ、相手方損保から「訴訟移行要請」というものを出されてしまいました。
この「訴訟移行要請」が相手方損保・共済から出されると、賠償額の算出に当たり医学的な知見が必要な場合等、紛争処理センターにおける迅速解決に適さないと紛争処理センターが判断した場合には、センターでの手続が終了となってしまいます。
本件においても、本件は紛争処理センターにおける解決に適さないとセンターにおいて判断されてしまったため、紛争処理センターでの手続は終了してしまいました。
そのため、訴訟を提起しました。
訴訟提起から8カ月間、5回ほどの期日を経て、裁判所から和解案が示されました。
和解案では、休業損害は通院の全期間を通じて認められ(ただし、本人が健康保険から受け取っていた傷病手当金の分は控除され)、慰謝料については、むち打ち症等で同期間通院した場合に予測される金額の約30%の金額が認められました。ここから、Mさんが事故前から心療内科に通院していたことを捉えられ、素因減額として賠償金額が1割減額され、ここに若干の調整金を上乗せし、最終的なMさんの手取り金額が約42万円とされました。
この和解案でもって和解となり、ご依頼から1年9カ月程の期間を要して、ようやく解決を見ることができました。
所感
Mさんのケースでは、事故による傷害が、骨折やむち打ちなど身体に対するものではなく、うつ病、心的外傷後ストレス障害といった心理面に対するものであったことから、手続は相当難航しました。
一般論ですが、事故後、心理面の傷害が生じた場合には、事故とその心理面の傷害との因果関係の証明が難しく、心理面の傷害の治療のための治療費や通院に係る慰謝料の支払いを得ることも容易ではありません。
さらに、Mさんのケースでは、事故前から心療内科に通院していたという事情も、事故と心理的傷害との間に因果関係の阻害要因となっていました。
本件においては、Mさんの心療内科の主治医の作成にかかる「患者の事故後のうつ病は、明らかに本件事故が原因と考えられる」、「うつ病により、少なくとも6カ月の休職は必要と考えられる」という強い意見書があったことから、心理面の傷害に係る慰謝料及び休業損害が裁判所の和解案においても認められたものと考えられます。
交通事故に遭われてお怪我をされた方は、是非、当事務所にご相談ください。